« 『回虫!』(>_<)! (幼稚園年長時代 Ⅷ) | トップページ | 『温室。』 (幼稚園年長時代 Ⅹ) »

2009年12月 4日 (金)

『DUTUSUN!』 (幼稚園年長時代 Ⅸ)

畑での収穫が終ると、父親は、耕運機で荷車を牽引し、戻って来た。

そのまま、家の前の坂を下り、川端へと、向かう。

母親は、重いリヤカーを牽き、鍬などの農具を積んで、帰って来た。

母親も、川端へと、向かう。

そして、収穫してきた野菜を、藁を束にした物で、せっせと洗う。

それから、藁で、それらを束ねる。

出荷できる物は、市場へと運ぶ。

出荷できそうに無い物は、自宅へと、運ばれる。

夕暮れになり、薄暗くなっても、その作業は終らない。

とにかく、終らない。

市場へ運ぶ準備ができると、今度は、二人で、耕運機に牽引された、荷車の前に付いている座席に座り、市場へと向かう。

父親と母親が、家に戻って来るのは、大体、20時頃であったろうか?

毎日、日の出頃から働き出し、夜まで、働く。

本当に、父親と、母親の姿を観るのは、稀に近い状態であった、と思う。

とにかく、厳しい、生活状態であったことには、間違いが無いであろう。

後から母親に聞いた話であるが、収入は、殆ど、無かったと言う。

祖父は役場で働いていて、大そうな収入はあった。

だけれども、その収入は、家を守るため、本家の意地を保つため、また、見栄を崩さないために遣われた。

家族には、その収入は、回っては来ない!

父親と、母親は、田畑を守るため、そして、私達兄妹を養育する為だけに、働いていた。

とにかく、本当に、貧乏だった事には、間違いが無いであろう。

母親は、雨の日などに、セーターや襟巻きを編む。

妹達に、お手製の、ワンピースを仕立てる。

買い物などに、行った事などは、全く無い!

私の服は、全部、叔父などのお下がりを、母親が、子供用に、仕立て直した物ばかりであった。

また、親戚から、頂いて来た物ばかりであった。

靴だって、幼稚園の上履き以外に、新品を買って貰ったことなどなかった。

本当に、どうやって、やり繰りをしていたのであろうか?

私達兄妹には、その当時は、そんな事は、知る由も無い。

それが当然であったから、考える事も無かった。

お洒落とか、ファッションとか、そんなものなど、全く関係が無かった。

服のセンスなど、何も気にもしなかった。

ズボンや上着の、当て継。

靴下だって、穴が開くと、当て継をした。

着心地だって、関係が無い。

とにかく、何かを着ていれば、それで良かった。

あるとき、父親だけが、野良仕事に出かけない日があった。

母親は、野良仕事に行っている。

私は、いつも通り、幼稚園に向かい、そして帰って来た。

すると、色は、水色であるが、どうにもくすんだ、美しくない水色のトラックが、家の庭に停まっていた。

トラックの後の部分には、白い文字で、『DATSUN』と、書かれていた。

その傍で、父親が、満面の笑みを湛え、何か話をしている。

ふと、庭の東側を見てみると、牛の、『あお』の居た牛舎の中が、綺麗になって、何も無くなっていた。

『DATSUN』は、そこに納められた。

それからは、耕運機は、家で、留守番をする事が多くなった。

父親と母親は、仲良く、くすんだ水色のトラックに乗り、野良仕事に、出掛けて行った。

ただ、格段に、時間が短縮されたことは、言うまでも無い!

父親と、母親の、帰りも早くなった!

特に嬉しかったのが、父親の機嫌が、良くなった事である。

とにかく、嵐は吹き荒れなかった。

少し、平和が、訪れたのである。

正月やお盆に、母親は、実家に帰りたかったであろう。

だけれども、親戚が、大挙して押し寄せてくる。

従って、実家に帰っている暇などは、全く無かった。

実家に帰ったとしても、日帰りか、1泊程度であった。

それも、私達兄妹、3人を連れての、バス、電車での移動である。

父親は?

と言うと、母親の実家などには、全く、顔を見せなかった。

父親は元来、出不精であるが、それに加え、バスにも乗らない。

電車にも乗らない。

要は、お金を遣いたくなかったのである。

それにしても、トラックなど、中古車にしても、よく買ったものである。

そのトラックのお陰で、もう一つ、変わった事があった。

父親が、何と!母親の実家に行くようになったのである。

自慢げに、トラックを運転し、母親の実家に行く様に、なったのである。

これには母親も、大そう喜んでいた、記憶がある。

ただ寂しいことに、父親は、『遊び』を、全く、知らなかった。

母親の実家は、修善寺の山奥にある。

その山奥の為、逆に、みんな、『遊び』を、よく知っているのである。

将棋・囲碁・花札・トランプなど。

女性陣は、百人一首をよくやっていた。

とにかく、母親の実家は、賑やかだった。

だけれども、父親は、遊びの輪の中に、入る事はできなかった。

と言うか、入る事ができなかった。

母親の実家に、自慢げに行った父親。

母親の実家で、とにかくひたすら、睡眠を貪っているばかりであった。

でも、トラック1台で、かなりの平和が、訪れた事には、間違いが無い!

|

« 『回虫!』(>_<)! (幼稚園年長時代 Ⅷ) | トップページ | 『温室。』 (幼稚園年長時代 Ⅹ) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1273244/32485842

この記事へのトラックバック一覧です: 『DUTUSUN!』 (幼稚園年長時代 Ⅸ):

« 『回虫!』(>_<)! (幼稚園年長時代 Ⅷ) | トップページ | 『温室。』 (幼稚園年長時代 Ⅹ) »